THA-CUPテンプレート2
- 2018.04.07
- THA・BHA
THA-CUPテンプレート2
前回はTHA-CUPのテンプレートに必要な要素を説明しました。
CUP外転角・Host Bone接触率・CUP-CE角でしたね。今回はこれらに加え、Offsetと脚長差を考慮してStem位置と合わせていく作業を紹介します。
まずはCUPとStemの位置を決める
下図は前回の記事でCUP設置した図です。
今回はこのレントゲンにて話を進めていきます。
次にStemのテンプレートを行います。
Stemのテンプレート方法はBHAの際のStemテンプレートと同様ですので「Stemテンプレート」を参照して下さい。
ここでは省略します。
この時点ではTHA-CUPとStemの位置関係はバラバラです。どちらのインプラントも現時点での骨に合わせてあります。
この状態でまずは脚長差を計測します。
Stem骨頭中心と、CUP中心の高さの差を確認します。術後は必ずStemとCUPがセットになり骨頭中心は一致しますので、脚の延長が何mm必要なのか確認します。
ただしこの時点ではInner Headは±0mmで考えます。Inner Headでの調整はStemをCUPと合わせて見てから検討します。
高位脱臼の場合は脚の延長が大きくなる場合があります。3cmまでは安全に伸ばせると言われていますが、それ以上の延長は神経損傷の危険もあります。また脚延長率(大腿骨長に対する延長量の割合)が10%以下であれば安全とも言われています。
StemをCUPに合わせてみる
臼蓋に対するCUPの設置位置と大腿骨に対するStemの設置位置が決まったら、StemをCUPに合わせてみます。具体的にはStemの骨頭中心とCUPの骨頭中心を重ね合わせます。
この状態でOffsetと脚長差を確認していきます。
まずはOffsetの確認をしてみましょう。Offsetは2つありましたね。まだ把握していない方は「レントゲンから見る脱臼リスク3」をご確認下さい。
この場合だと2つのOffsetとも健側に比べやや短くなっています。
次に脚長差を確認します。脚長差の確認方法は以前「Stemの基礎知識3」で紹介しています。まだ把握していない方は参照して下さい。
この場合だと健側に比べやや短いです。
さて今回の場合、Offsetはやや拡大が必要で、脚長はやや延長が必要です。
その場合はどうするのでしょうか?
理屈は簡単です。設置後の大腿骨がやや外側遠位にあれば良い訳です。
この調整はInner Headで行います。
プラスHeadを使用すればその分だけOffsetは外側へ拡大し、脚長は伸びます。
なので今回の例ではInner Headはプラスが計画されます。
最終的には術中のトライアルにていくつか試し、可動域や整復して動かしたときの感覚を確認して決定されます。
術中トライアルはもうどんな意味合いか分かりますよね?手術において非常に重要な工程ですのでまだ把握していない方は「THAの手術概要2」をご確認下さい。
他の調整方法は?
今回の場合はOffset・脚長ともに拡大または延長が必要な例でしたのでInner Headで調整しました。では他の調整方法はあるのでしょうか?
例えば、Offsetが短くて脚長には左右差がない場合、これは内外側への調整は必要ですが上下の調整は不要です。
その時はHigh OffsetタイプのStemを使用します。
同じStemでも通常のものとHigh Offsetのものがありますので、それを使用します。
現在ほとんどのStemには通常とHigh Offsetの2種類あると思います。
同じステムにおいてHigh Offsetのステムを選択すると、脚長は変えずにOffsetのみ拡大できます。
このようにStem自体での調整と、Inner Headでの調整、また多くはないですがCUP位置での調整を行い、左右差を解決していきます。
前回の記事と併せて読むと、THAにおけるテンプレートってBHAに比べると非常に大変な事が分かると思います。
実際のテンプレート
最後に実際に術前計画にてテンプレートを行ったものを紹介します。
臼蓋形成不全が強く、CUP設置に少し難渋した症例です。レントゲンでは分かりにくいですが、抜去した骨頭を砕いてCUP側に移植してあります。
CUPとのHost Bones接触率を確保するのに骨移植は結構有効です。
このように術前にインプラントのサイズや設置位置を計画することはとても重要です。
2Dテンプレートは立体的な情報でなく平面的な情報で行うため、3Dテンプレートの方が情報量は圧倒的に多いです。
もはや2Dテンプレートは古いのかも知れません。
次回は3Dテンプレートを簡単にですが紹介したいと思います。
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