ステムの基礎知識8 (Cementless Stemの種類3)

ステムの基礎知識8 (Cementless Stemの種類3)

ステムの基礎知識8

Cementless Stemの種類(3部目)

前回に引き続きCementless Stemを紹介します。

今回は「Cylindrical & Full Coated」「Modular」「Anatomic」です。

 

Cementless Stemの種類のおさらい

Harpal S. Khanuja先生の分類をおさらいしましょう。

Single Wedge

Fit & Fill

Tapered

(Round)

(Cone)

(Rectangle)

・Cylindrical & Full Coated

・Modular

・Anatomic

Cementless Stemの種類

今回は第3部、「Cylindrical & Full Coated」「Modular」「Anatomic」を紹介します。

 

Dorrの分類」と「ステムの固定方法」をまだ読んでいない方は先に確認してからですと理解が深まります。

 

Cylindrical & Full Coated

まずはCylindrical & Full Coatedです。Cylindricalの日本語の読み方はシリンドリカルです。

Cylindricalとは「円柱」の意味で、棒のような意味合いです。

円柱状のステムの全体にポーラスコーティングがされているという意味で「Cylindrical & Full Coated」となります。

Cementless Stem(Cylindrical & full Coated)

Cylindrical & Full Coatedは遠位部で固定を得るために最終リーマーを実際のステム径より0.5mm小さくリーミングするのが特徴です。例えば10.0mmの円柱を9.5mmの空洞に入れ込むイメージです(プレスフィット)。髄腔占拠率は高いステムとなります。

固定は遠位固定で、プレスフィットにて固定を得ます。

ステムの全体にポーラス加工が施されており、そこにBone ingrowthまたはBone ongrowthが起こり長期固定となります。

円柱状であるため回旋抵抗力が落ちる可能性が危惧されます。またこのタイプのステムはリビジョン時にステム抜去に非常に難渋する事も多いです。

TypeAのような髄腔形状の大腿骨に使用すると、ステム遠位での接触率が低くなり尖端だけでの接触になってしまい、固定力が期待できないため不向きです。

 

Modular

次にModularです。読み方はモジュラーです。

Modularとは「組み立て」の意味です。Modularタイプはネック部分を組みたてて設置します。

Cementless Stem(Modular)

図のステムは骨切り位置がやや特殊

Modularはネック部分が可動するため、前捻角の調整変更が可能です。以前は20°しか動かない設計でしたが、近年のものは360°可動できるため、患者さんに合わせた適正な位置に調整可能です。

Cementless Stem(Modular)の特徴

そのためラスピングの際に前捻角を気にせずラスプ可能なためステム設置の難易度は下げられます。

固定は遠位固定で、遠位部分にはリブがついています。このリブが皮質骨に食い込み回旋対抗力を発揮します。また、近位内側が張り出し、そこにポーラス加工が施されています。これにより近位の髄腔占拠率を上げています

そのためTypeAにもTypeCにも適応可能です。

 

Anatomic

そしてAnatomicです。読み方はアナトミックです。

アナトミックとは「解剖」の意味です。そのため身体構造に合わせた解剖的なデザインとなっております。

Cementless Stem(Anatomic)

矢状面から見るとやや弓なりになっているのが分かる

Anatomicは矢状面において大腿骨のボーイング(bowing:たわむ・運弓)つまり前方へやや弓なりになっている形状に合わせたステムであることが特徴です。

固定は近位固定で、前後・内外側にて髄腔占拠率を高めることで皮質に固定されます。

ステムの近位部分に3Dポーラス加工が施されており、そこにBone ingrowthまたはBone ongrowthが起こり長期固定となります。

ステム長が短く近位部分で髄腔を占拠しているため、健常に近い荷重伝達が可能と言われています。

TypeCには近位での髄腔占拠率が確保できないため向きません。

近年Anatomicタイプのステムも種類は増えていますが、いまひとつ人気が出ていないように感じます。Anatomicタイプを使用するよりSingle Wedgeを選択する医師の方が多い気がします。

 

 

今回はCementless Stemの「Cylindrical & Full Coated」「Modular」「Anatomic」を紹介しました。これでCementless Stemの紹介は以上です。3部構成となってしまいましたが、読んでくれた方ありがとうございます。

執刀医は、患者さんの骨質や髄腔形状、年齢、術後の活動量など総合的に判断してステムを選択します。どの種類のステムが優れているというような事はありません。患者さんの状態に合わせてその人に合ったベストなステムが選択されます

 

ここまででステムの基礎知識は完了です。

次回は+αの知識として、近年のステムを紹介したいと思います。

 

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