人工膝関節置換術とは?

  • 2018.04.12
  • TKA
人工膝関節置換術とは?

人工膝関節置換術とは?

前回までで人工股関節・人工骨頭について色々と説明してきました。

今回からはいよいよ膝関節についてです。

この記事を読んでくださっている医療従事者の方々に膝OAについて説明する必要はないと思います。今後一般の方向けの記事も掲載していこうかと考えていますが、今回は膝関節の解剖や膝OAについての説明はしません。

人工膝関節置換術は2種類ある?

人工膝関節置換術は主に2種類のあるのはご存知の方も多いと思います。

そう、TKAUKAです。

TKA:Total Knee Arthroplasty
全人工膝関節置換術

UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty
単顆人工膝関節置換術

TKAとUKA

TKAは膝関節の全てをインプラントに置換し、UKAは内側または外側のどちらか一方をインプラントに置換します。
UKAのほとんどは内側の置換術です。

また日本国内における人工膝関節においてほとんどがTKAであり、UKAは全体の1割弱程度です。UKAは症例数としては少ないです。

ちなみにBHAとTHAでは人工股関節置換術と人工骨頭置換術で全く別の扱いでしたが、TKAとUKAはどちらも関節置換術です。どちらにおいても大腿骨・脛骨の関節面をインプラントに置換するためですね。

TKAとUKAの違いは?

ではTKAとUKAの違いについて説明していきます。
前述したと降りTKAとUKAの違いは全置換か単顆置換かですが、その違いがもたらす影響を比べてみましょう。

まずは手術時間です。
TKAは手術が速い医師で執刀開始から縫合まで1時間30分程度で完了します。TKAは約2時間程とみて良いと思います。
比べてUKAは執刀医によっては1時間程で完了させてしまう医師もいます。UKAは約1時間30分程とみて良いと思います。
もちろん執刀の他に麻酔をかける時間や皮膚消毒の時間もあるため、患者さんが手術室に入ってから出てくるまではもっと時間はかかりますが。

 

次に出血量です。
当然TKAに対してUKAは侵襲が少ないので出血量もUKAの方が少なくなります。これは一概に言えませんがTKAで500ml前後、UKAで200ml前後です。
人工膝関節の手術の場合、駆血帯で止血がしっかり出来ますので、出血量はTKA・UKA共に多くはありません。もちろん出血量は少ないに越したことはありません。

 

皮切の長さの違いです。
TKAはおおよそ13cm程UKAは10cm未満の事が多いです。皮切の長さ自体はあまり関係ないのですが、皮切が短いということは切開している軟部組織(筋や関節包)の範囲も小さいということです。この差は術後の回復過程に影響します。
そのため手術直後の患者さん満足度はUKAの方が高いです。回復過程も非常に早いです。

 

ACLとPCLの処理の違いです。
ACLとは前十字靭帯、PCLとは後十字靭帯の事ですね。
TKAにおいてはACLは完全に切除します。PCLは切除する場合と温存させる場合があります。
それに対しUKAではACL・PCL共に100%温存させます。これがUKAの最大のメリットかもしれません。
そのためTKAに比べ膝関節の動きを自身の靭帯で制御可能です。またACLやPCLには様々な受容体が存在しているため、それらを温存できるのはメリットです。

 

さて、文字ばかりが多くなってしまいましたので図でまとめます。

TKAとUKAの比較

ちなみに可動域はTKAもりもUKAのほうが大きい場合が多いです。ただし術後の可動域は、術前の関節包の拘縮の程度・後顆骨棘の残存程度・変形の程度により大きく左右されますので一概には比較できません。

実際UKAってどうなの?

現状、内側のみの変形でもTKAを行う施設は多いです。
どうせUKAやるならTKAにして全置換した方が良い、といった考えですね。
また実はUKAは1970年代から行われ始めており、当初は適応が曖昧でした。そのためリウマチ等の症例にも施行されており、成績不良も多かったようです。現在は適応もある程度明確かつ広範囲になっており、UKAを選択する医師も少しずつ増えています。
手術時間・出血量・予後・組織温存、これらの点から見るとUKAはTKAより非常に良いように思えます。ただしそれは適切な適応に対して適切な機種選択、手術技術が十分にあって発揮できるものです。その場合はUKAは患者満足度の高く、長期的な成績も良いものとなると考えられます。

そのため、TKAとUKAの比較の記事を書いておいてなんですが、単純にTKAとUKAを比べるのはややナンセンスに思えます。

ある患者さんにとってはTKAがベストの場合もあれば、UKAの方が良い場合もありますね。
ケースバイケースです。

 

 

今回は2種類の人工膝関節置換術について説明しました。

次回はTKAにおけるACLとPCLの処理について紹介したいと思います。

 

 

 

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