TKA手術の概要
- 2019.09.29
- TKA
TKA手術の概要
今回はTKAの手術の概要を説明したいと思います。
インプラントの名称がまだ曖昧な方は、まずはTKAインプラントの名称をご確認ください。
TKA自体は非常に有名です。
その歴史も長く、整形外科手術において最も費用対効果の高い手術のひとつとも言われています。
整形外科勤務者やリハビリ職ならまず聞いたことのあるTKAですが、実際の手術ってどのように行われているのでしょうか?
まずは皮切から切り開く
THAの手術概要でも書きましたが、まずは当然皮膚から切っていきます。
皮切は正中切開か内側切開が多いです。
手術痕として残る傷跡が、膝蓋骨の真ん中に残っている患者さんを見たことがあると思います。
あれは膝蓋靭帯等を切っているのではなく、皮膚と皮下組織を含む脂肪を切った跡ですので、筋膜の切開部位とは別と考えなくてはいけません。
膝蓋骨を反転させる
膝蓋肢帯または内側広筋の一部を切離すると、関節内までたどり着きます。
そこから術野を広げるために膝蓋骨を反転させます。
実際に手術を見てしまえばすぐに分かるのですが、「膝蓋骨を反転させる」と言ってもイメージがつきにくいかと思いますので図で確認してみます。
図の左の写真は膝蓋骨を反転させる前のものです。そのため当然、膝蓋骨の表側(腹側)が見えています。
それに対し図の右の写真は膝蓋骨を外側に反転させてものです。
つまり膝蓋骨の裏側(背側)が見えている状態となります。
こうすることにより、術野が一気に広がります。
そのため骨の処理や軟部組織の処理がより行いやすくなるのです。
最近のMISでは膝蓋骨を反転しない(できない)術式も見られてきています。
また、この際に滑膜の除去を行います。
膝OAでは、滑膜が増殖している場合がほとんどです。後方関節包に増殖した滑膜の除去は骨切りを行った後の方が手術スペースが確保されます。
また、膝蓋下脂肪体も半分程度除去します。
膝蓋下脂肪体に関しては、十分に温存させた方が良いという意見と、重要視せずに大きく切離してしまって良い、という意見があります。
大腿骨・脛骨の骨切り
大腿骨と脛骨をそれぞれインプラントの形状に合わせて骨切りしていきます。
文章で書くとこれだけなのですが、どこでどう切るかは非常に重要であり、細かな作業があるのです。
また、大腿骨・脛骨の骨切りの順番は医師の考え方によりそれぞれです。
骨切りに関しては改めて記事にします。
写真は大腿骨遠位端・脛骨近位端の骨切りのみ行われている(バランサーで圧をかけている場面)。大腿骨は遠位端に加えさらに4面がカットされる。
骨切りがされるとインプラントを設置する準備が整う訳ですが、こちらも股関節と同様にトライアルという作業を行います。
過去の記事を読んでいてくれている方はこのトライアルという作業の概要と重要性は理解されていると思います。
把握されていない方はTHA手術の概要2を確認してみてください。
整形外科の手術において、トライアルは非常に重要になる事が多いです。
トライアルが済み、問題なさそうであれば本物のインプラントを設置します。
その後は関節内を十分に洗浄し、関節包や筋・皮膚を縫合して手術終了です。
TKAの手術の流れまとめ
・皮膚→脂肪→筋→関節包を切開
・膝蓋骨を反転→滑膜の除去
・大腿骨と脛骨の骨切
・トライアル
・インプラントの設置
・洗浄して縫合
とても大まかですが、TKAの手術の概要はこのような感じです。
術中、常に軟部組織の処理は行っています。
また、TKAの手術において重要なのは、伸展時の関節のキツさと屈曲時の関節のキツさ(関節GAP)です。
これについては非常に大切な概念になってきますので、骨切を説明した後にしっかり記事にしていきます。
次回はまずは大腿骨と脛骨の骨切りについて紹介します。
⇐前記事(Lateral Parapatellar Approachとは)
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