THAアプローチ別 侵入経路
- 2018.02.14
- THA・BHA
THAアプローチ別侵入経路
各術式紹介の中でどの筋のどの部位を切開するかは説明しましたね。その中で筋自体を切る「筋切開」、筋と筋の間を切る「筋間切開」があることも紹介しました。
今回はTHA・BHAにおける各アプローチの侵入経路の違いを視覚的にまとめてみました。
水平面から見る侵入経路
THAの各アプローチの侵入経路を水平面から見るとどのように見えるのでしょうか?
それを表した図がこちらです。
図は骨頭中心よりやや遠位の水平面
この図と併せて各THA・BHAアプローチの侵入経路を説明していきます。
大殿筋から侵入し、骨頭後方の外旋筋を横断し大腿骨頸部に到達します。頸部の後面にて外旋筋を通過しているのが分かります。このイラストに写っている外旋筋は内閉鎖筋です。
Revisionで選択される事の多いDLA。中殿筋を直線的に貫き大腿骨頸部に到達しています。大転子のわずかに前方を目指し侵入していきます。水平面では分かりませんが、上下方向に大きく切開するため腸脛靭帯部分まで切開する事も多いです。縦方向(頭側→尾側)に向けての直線的な切開ですので腸脛靭帯の機能低下への影響は少ないです。
大腿筋膜張筋の後縁に沿って切開し、前方へ寄せます。そして中殿筋の前縁に沿って切開し、後方へ大きく寄せます。この中殿筋を後方へ寄せる際に中殿筋を傷つけやすいです。もちろん術中にレとレクターという器械で筋肉を外側に引き寄せて傷つけないようにしますが、中殿筋を傷つけている場合は少なくありません。
縫工筋と筋膜張筋の間から侵入し、大きく曲がることなくおおよそ直線的に大腿骨頸部に到達しているのが分かります。そのため「DAAが筋自体を切らない唯一のアプローチ」と言う医師もいます。前面は後面に比べ脂肪組織が薄く侵入しやすい事も特徴です。
THAの基本アプローチの侵入経路は視覚的にも把握しておきましょう。
現在、基本アプローチから派生した様々なMIS(最小侵襲手術)が開発されています。切開長のそれ自体は短いため最小侵襲となる訳ですが、そのどれもが皮切は短くとも筋自体を切開します。それに対しDAAは唯一、筋自体は切開しないアプローチです。
これが、DAAが究極のMISだと言われる理由です。
手術を低侵襲に抑えるためには?
全ての整形外科医は、最小侵襲とは言えずとも可能な限り低侵襲を目指しています。侵襲する組織が少ない程術後の患者さんへの影響は少ないですからね。
では低侵襲に抑えるためにはどのような事が必要なのでしょうか?
もちろん手術スキルは必要です。しかしスキルだけでは絶対に越えられない因子、それは手術中に使用する器械とインプラントの大きさです。
例えば、THAカップはサイズにもよりますがおおよそ50mm程の大きさがあります。そのため皮切を50mm未満(インプラントサイズ未満)にするのは不可能です。物理的にインプラントを入れることができなくなってしまいます。また手術器械が大きすぎたり、小さな手術スペースに対し使いにくければ術中に皮切を広げざるを得ません。
これはステムにも同じ事が言えます。
大腿骨にステムを設置(挿入)するときにあまり大きく太いデザインのステムではMISでの手術スペースでは周囲の筋や関節包を傷つけてしまう事もあります。
そのため近年のステムはMIS(最小侵襲手術)に対応しようと、細くしたり、短くしたりした形状のステムが開発されたりしています。
決してMISに適したステムが優れているという訳ではない。
短いステムはDAAに適しており、前回紹介したERPには細いステムが適しています。術野や脱臼肢位によっても設置しやすいステムは変わるため、各メーカー様々な工夫がなされています。
もちろん各社のステムはアプローチに適した形状というだけではなく、もっと様々な工夫がなされていますよ。
ステムの紹介は今後記事にしていきます。
話が逸れましたが、今回は各アプローチの侵入経路をご理解して頂ければ幸いです。
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