THA手術の概要 1

THA手術の概要 1

THA手術の概要 1

今回はTHA・BHAの手術の概要を説明したいと思います。前回、各インプラントの名称を説明しましたのでまだ確認していない方は前回の記事を確認してから読むと理解し易いです。記事の中に名称が結構出てきます。

さて、THAの適応は「人工関節の適応2」で、BHAの適応は「BHAの適応1」で紹介しましたね。今回はTHAの手術の手順を説明していきます。セラピストの方々は知っているようで知らない事もあると思いますので、この機会に確認してみて下さい。

 

まずは皮膚から切り開く

当たり前ですが、まずは皮膚とその直下の脂肪組織を切り開かなくてはなりませんね。皮膚 → 脂肪 → 筋 → 関節包 の順番で進んでいき大腿骨まで進みます。

それぞれのアプローチでの侵入経路は「THAアプローチ別侵入経路」から確認して下さい。

 

大腿骨頭の抜去はどうやるの?

大腿骨が露出したら、THAもBHAもまずは骨頭を抜去しなくてはいけません。大腿骨から骨頭を切り離し、取り出します。さて、大腿骨頭を抜去するには骨頭と大腿骨を切り離さなくてはいけません。どこで骨切りを行い、切り離すかと言うと下図の位置です。

THAの手順「骨頭抜去」

抜去した骨頭は自家骨なので手術が終わるまでは破棄はしない。骨移植などが必要な際は砕いて使用する。

おおよそこの位置で骨切りを行います。

挿入するステムの形状によって骨切りラインは若干異なりますが、ほとんど変わりませんのでこの位置で覚えてしまって問題ありません。当たり前ですが大切なのは大転子と小転子を残すことです。いろんな筋が付着していますからね。大腿骨頭には筋は付着していません。

骨切りした後の骨頭は骨頭抜去器で取り除きますが、実は骨頭の抜去は結構大変なのです。頸部の骨切りが完了したらポロっと取れる訳ではありません。なぜなら大腿骨頭靭帯が臼蓋から骨頭頂部に強力に着いているためです。この靭帯を切離しなければ骨頭は抜去できません。

THAの手順「大腿骨頭靭帯切離」

この靭帯が切離できずオペ時間が長引くこともある

大腿骨頭靭帯が切離できれば骨頭はガポッととれます。THAにおいて実際に取り出された骨頭を見ると様々に変形しているのが直に分かります。またBHAの適応は頸部骨折ですので、基本的に変形はないため取り出された骨頭は非常に綺麗です。

 

臼蓋のリーミングとは?

骨頭抜去後は臼蓋にTHAカップを設置するための半球状の穴(溝という表現が適切かも)を削ります。臼蓋リーマーという器械でカップのサイズに合わせて削るのですが、この作業を臼蓋の「リーミング」と言います。削った形に合わせてカップがそのまま固定されるので、臼蓋リーミングは非常に繊細な作業になります。設置位置の重要性は(レントゲンで見る脱臼リスク1)で説明しましたね。

THAの手順「臼蓋リーミング」

予定サイズCUPの1mm小さいサイズで最終リーミングする事が一般的

狭い術野で正確な位置に削るのは大変難しくかつ重要な作業です。BHAとTHAの手術レベルの違いはこの臼蓋リーミングのみといっても過言ではありません。THAは変形の度合による難易度の違いはもちろんありますが、このリーミングが非常に難しいのです。

リーミングが完了した時点でCUPのインプラントを設置する場合もあります。実際のインプラントを入れるタイミングは執刀医によって様々です。

CUPの固定はスクリューを使用する場合やセメントを使用する場合などがあります。

 

大腿骨のラスピングとは?

臼蓋リーミングが完了したら大腿骨の処理に戻ります。

骨切りが済み、骨頭が抜去された大腿骨にはステムを挿入しなくてはいけません。ステムを挿入するにはステムの形状に合わせて大腿骨内部を削る「ラスピング」を行います。

THAの手順「ラスピング」

ラスピングの角度を間違うとステムの設置がズレるためリーミング同様、非常に重要な作業である

大腿骨髄腔にラスプを上下させ、大腿骨の髄腔をステムの挿入する形に合わせて削っていきます。術前に髄腔の形状の確認と予定インプラントを仮決定しておき、その予定インプラントサイズに合わせてラスピングを行い髄腔を少しずつ削っていく作業です。髄腔内の海綿骨を圧縮しながら髄腔に空洞を形成する訳ですが、実際はラスプの出し入れの際に海綿骨は結構掻き出されてしまいます。

THAの手順「ラスプされた大腿骨」

ラスピングが完了すると大腿骨に空洞のスペースができます。そのスペースに実際のステムを挿入します。セメントステムの場合は挿入、セメントレスステムの場合は打ち込むという表現が適切かもしれません。

リーミングとラスピングが完了すればインプラントを設置します。

THAの手順「インプラント設置」

 

インプラントを設置した後は関節内を十分に洗浄し、関節包や筋・皮膚を縫合して手術終了です。

 

THA手術の流れまとめ

・皮膚→脂肪→筋→関節包を切開

・大腿骨頸部を骨切り

・大腿骨頭の抜去

・臼蓋側の処理(リーミング)

・大腿骨髄腔の処理 (ラスピング)

・インプラントの設置

・洗浄して縫合

※順番は執刀医によって異なる。またトライアルの手順は記載していない

 

おおまかに説明するとTHAの手術手順はこんな感じです。

実はここには記載していませんが、術中トライアルという作業を行います。このトライアルは非常に大切です。

次回はこのトライアルについて説明して、各インプラントの詳細を解説していきます。

 

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