人工関節の適応 2
- 2018.01.21
- 人工関節
なぜ人工関節に置換するのか
前回は人工関節の適応疾患の代表的なものを紹介しました。
・変形性関節症(OA)
・関節リウマチ(RA)
でしたね。
ではなぜこれらが人工関節の適応となるのか、ましてやなぜ人工関節に置換する必要があるのかを詳しく書いていきたいと思います。
少し長くなってしまいますが読んで頂くと基礎的な生理学・病理学として役立つ知識になるのでぜひ読んで頂けたらと思います。
そもそも関節の痛みとは何か?
OAやRAは疼痛が出現します。むしろ疼痛が出現しないOAやRAならば置換しません。
人工関節に置換する適応条件の大きなひとつは痛みですからね。そしてやっぱり整形外科領域の一番の敵は痛みです。
ではその痛みとはどのようにして出現するのでしょうか?
「軟骨がすり減って痛みがでる?」
これは少し違います。
まず、すり減るという表現が少し違います。どちらかと言うと溶け出すに近いです。
さて、軟骨には神経がないため痛みを感じることはありません。難しく言いますと自由神経終末、つまり侵害受容器自体がないため痛みを感じないのです。
ちなみに自由神経終末とは末梢神経の端っこ、つまり神経の尖端です。
よく医学書などに、「侵害受容器=自由神経終末」と書かれています。これは分かりやすく言うと、末梢神経の先っぽ自体が侵害受容器なのです。
また、軟骨に神経がないということはつまり、血管もほとんど存在しません。
基本的に毛細血管の周囲には末梢神経が存在しますし、末梢神経の周りには毛細血管が存在します。
末梢血管が存在しなくては組織は再構築されませんし栄養もされませんので、一度減ってしまった軟骨組織というのは再生は難しいと言われています。
軟骨組織自体は痛みを感じません。
ではOAやRAの患者さんは何から痛みを感じてしまっているのでしょうか。具体的にどの組織が痛みを感じているのか十分に理解していないリハビリスタッフの方もいらっしゃるのではないのでしょうか?
実は痛みを感じている軟部組織は
「関節包」 です。
もっと言うと
「滑膜」 です。※関節包 = 線維膜(浅層)+滑膜(深層)
※またOAの痛みは様々な種類があるため滑膜の痛みが全てでは決してありません!
滑膜には豊富に神経が走っています。もちろん自由神経終末(侵害受容器)が多く存在します。
その滑膜を化学的に刺激してしまい痛みが出ているのです。
ではその刺激物質はどのようにして出現してくるのかというと、実は軟骨組織が溶け出してきた成分です。
溶け出した軟骨組織がが小さな小さな遊離物をなって関節液の中を漂い始めます。
するとその溶け出した軟骨成分に対しマクロファージ等が反応して貪食し始めます。そして化学物質(サイトカインやブラジキニン等)が出現し滑膜(正確には滑膜に存在する侵害受容器)を刺激して痛みが脳へと伝えられます。
この辺りまでくると化学的な痛み(Chemical Pain)と物理的な痛み(Mechanical Pain)についても細かく説明しなくてはいけなくなってしまうので、痛みの話は次でまとめます。
つまりOAやRAの痛みとは?
軟骨組織が溶け出す(剥離と表現される場合も有り)とそれを除去しようとマクロファージが働き始めます。
するとサイトカインやブラジキニン等の化学物質が出現し、これらの発痛物質が関節包の滑膜にある侵害受容器を刺激して痛みとして感じるのです。
侵害受容器が外部刺激(化学刺激)を痛みの電気信号に変えて脳へと伝達させるのです。
そして脳がその電気信号を受診すると、その部位が痛い、と感じるのです。
痛みの生理学を超簡易的に説明するとこのようなものになります。
※上記はChemical Painであり、Mechanical Painの説明ではない。
つまり人工関節に置換する目的は?
つまり、人工関節にする目的の概念はOAやRAによって変性した軟骨組織を全部除去して、ついでに骨棘も全て除去して関節内をスッキリさせれば痛みを出す原因がなくなるじゃないか!
という事なのです。
ただし、関節の中をスッキリ除去しただけでは関節としての機能が全くなくなってしいます。
それではとてもではありませんが日常生活を送れません。
ということで関節の機能も持った人工物を関節の代わりに入れるのです。
これが人工関節がOAやRAに適応する理由です。
人工膝関節や人工股関節の歴史は長く、手術の目的は今も昔も変わりません。
長くなってしましました。
読んでくれた方ありがとうございます。
次の記事からどんどん具体的になっていきます。
引き続きよろしくお願いします。
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