脱臼率は何%?

脱臼率は何%?

THAの脱臼率に関して

ここまで脱臼に関していろいろと説明してきました。今回は脱臼率についてすこし説明したいと思います。

 

THAの脱臼率は3%?

脱臼率という言葉を一度は聞いたことがあると思います。一般的にTHAの術後の脱臼率は3%と言われています。

この3%という数字、実はあまり意味のない数字です。

脱臼率は、インプラントの設置や種類・関節包のテンション・筋や靭帯の残存機能・術式などなどの影響により非常に変化します。そのため一概に3%という数字は様々な影響により大きく上下します。そのためあまり参考になりません。

むしろ、どのような状態が脱臼率が高い(低い)のか?を把握する方がはるかに有意義です。これらを説明していきますね。レントゲンから読み取れる脱臼の目安は既に紹介済ですね。それと加えてご理解していって頂ければと思います。

 

PrimaryとRevisionって?

まずは脱臼率の前にこちらを先に説明します。

手術にはPrimary(プライマリー)Revision(リビジョン)があります。

Primaryとは初回手術、Revisionとは同じ部位での2回目以降の手術のことです。例えば初めてTHAを行う場合は「THAのPrimary」と言います。

Revisionに関しては同部位での2回目以降の手術ですので例えば「BHAのRevisionでTHA」と言えば、元々BHAにてインプラントが入っているものを身体から抜去して、新たにTHA術を行う、という意味です。

場合によってはRevisionはインプラントの抜去の意味で用いられることもあります。

医師が「THAのRevisionするよ」と言えばTHAで入れたインプラントを抜去して新しいインプラントを入れるよという意味になりますね。

 

さまざまな脱臼率

さてさっそく脱臼率について書いていきます。一概にTHAの脱臼率と言っても状況によって様々です。

PrimaryのTHAの脱臼率は 0.6%

RevisionのTHAの脱臼率は 20.0%

同じTHAでもPrimary(プライマリー)とRevision(リビジョン)でこんなに差があります。Revisionの方が圧倒的に脱臼率が高いのが分かります。再置換すると脱臼しやすいということです。

また、術式によって脱臼率は異なります。

例えば、

前方アプローチの脱臼率は 0.7%

後方アプローチの脱臼率は 4.3%

※後方アプローチでも外旋筋を縫合する術式では1.1%です

また、術後の経過年月でも脱臼率は異なります。

例えば、

術後1ヶ月以内の脱臼率は 70%

術後1〜4ヶ月以内の脱臼率は 89%

術後半年以降での脱臼は極めて稀

この数字から分かるようにほとんどの脱臼は術後約半年以内に起こります。半年間、脱臼せずにいればそれ以降で脱臼することは極めて稀です。術後1年以上経過していれば日常生活で脱臼することはまずないでしょう(転倒や転落などの過度な外力を除く)。

また例えば1度脱臼した事がある患者さんは関節包が大きく緩む(強制伸張される)ため脱臼は頻発しやすくなります。いわゆる「脱臼癖がつく」というやつですね。

 

このように脱臼率という数字はさまざまな状況により大きく変化します。

そのため冒頭で述べたように、一般的に言われているTHAの脱臼率3%という数字は上記のような理由であまり意味がありません。大切なのはその患者様がどのような状況なのかを把握することです。

例えば症例Aさん

症例A

この場合は脱臼率は非常に高いですよね。セラピストも患者さん本人もかなり注意しなければなりません。日常生活のちょっとした動作で脱臼することもあります。

 

では症例Bさん

症例B

この場合は転倒転落やかなりの無茶しない限り脱臼はしません。

このように脱臼率の数字を把握するのではなく、どのような場合が脱臼しやすく、どのような場合は脱臼はしにくいのかを把握する事の方がよっぽど重要です。

脱臼ってTHAの永遠のテーマです。

 

ちなみに、BHAはほとんど脱臼しないと「BHA・THAの股関節の動き方」で説明しました。医師によってはBHAは脱臼しないと言い切る医師もいらっしゃいます。実は私は1度だけBHAの脱臼の患者さんをみた事があります。しかも前方アプローチで行ったにも関わらず後方脱臼をした方です。この方は精神疾患があり暴れてしまう患者さんでした。そのためか脱臼時の記憶もなく、全身アザだらけでしたので、恐らく転落か何かかと思われます。

BHAも場合によっては脱臼するんだなと感じた経験です。極端な例ですが…

 

さて、ここまでTHAの脱臼に関する記事をいくつか連続して書いていますので、脱臼率に関してはそれらをご理解頂き総合的かつ柔軟的に判断して頂ければと思います。また理学療法士等のリハビリセラピストの方々は受け持ちの患者さんそれぞれの状況と状態を把握して、リスクの少ないリハビリテーションを心がけて頂ければ幸いです。

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次回は、前方脱臼と後方脱臼について書いていきたいと思います。

 

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