大腿骨の髄腔形状(Dorrの分類)
- 2018.03.04
- 解剖学・生理学
大腿骨の髄腔形状
Dorrの分類
前回はステムの良設置の説明として前捻角を説明しました。
今回はステムの種類を紹介する前に大腿骨の髄腔形状について説明します。髄腔形状によって選択されるステムは変わってきますので、ステムの種類の紹介も前にぜひご理解して頂きたい内容です。
髄腔形状ってなに?
大腿骨には皮質骨と海綿骨があります。骨の外側を構成する皮質骨に囲まれた空間(海綿骨部分を含む)の形状が髄腔形状です。
前額面上のレントゲンに写る皮質骨内側の形状
皮質骨の両側のカーブに囲まれた形状ですね。
この髄腔形状にもタイプがあるのです。髄腔形状は皮質骨の厚さによって変わってきます。皮質骨が厚い場合はカーブは急になり髄腔形状は細くなりますし、皮質骨が薄ければカーブは緩やかになり髄腔形状は太くなります。
これらは形状別に分類されています。それが「Dorrの分類」です。
Dorrの分類とは?
まずはDorrの読み方ですが「ドール」と読みます。
髄腔形状のタイプによって分類されます。
Dorr先生が考案した分類方法
Type A:皮質骨が厚く、髄腔が狭く細くなっているタイプ
このタイプは骨質が良く、割りと若いヒトにはこの手イプが多いです。もちろん若者でも女性でこの形状のヒトもおります。
Type C:皮質骨が薄く、髄腔が広がっているタイプ
このタイプは骨質が悪く、高齢者に多いです。特に80歳以上の高齢者に多く、頸部骨折でのBHAの際には多く見られるタイプです。
Type B:AとC の中間であり、狭くも広くもない場合
骨質は悪くなく、標準的なタイプです。AとCの中間のタイプで、この髄腔タイプの方は年齢を問わずいらっしゃいます。
レントゲンで確認する髄腔形状が異なることが分かります。
前額面のレントゲンにて判断されます。良く見てみるとヒトによって異なりますので、それぞれご担当の患者さんのレントゲンを見比べて分類してみてください。
髄腔形状によって選択されるステムは異なります。
近位固定のステムはTypeAに適しており、遠位固定のステムはTypeCに適しております。
逆も同じで、TypeCに近位固定ステムは適さず、TypeAには遠位固定のステムは適しません。
この辺りはステムの基礎知識シリーズで詳細は説明します。
次回からステムの種類を説明していきますので、Dorrの分類でのTypeA・B・Cがどの形状なのか、まずはご理解しておいて下さい。
ちなみに余談ですが、Dorrの分類のTypeAとTypeCは別名があります。
TypeA:Champagne flute(シャンパンフルート)
TypeC:Stovepipe(ストーブパイプ)
と言われます。
シャンパングラスの写真と煙突の写真
TypeAはシャンパンフルートのように先に行くほど細くなり、
TypeCはストーブのパイプ、または煙突のように太いままなのでこの名称がついています。
この別名で表現する医師も多くおりますので、研修医の方はぜひ把握しておいて下さい。