廃盤ステムの紹介
- 2018.03.10
- THA・BHA
廃盤ステムの紹介
前回は近年発売されたの新しいステムを紹介しました。
新しい製品が開発されていく中で成績不良で徐々に使用する医師が減り、廃盤となった製品も当然存在します。今回はそんな廃盤となったステムを近年のステムの中からひとつ紹介します。
「ステムの固定方法」を確認してから読むと理解が深まります。
今回の記事は決して批判ではありません。
沈み込みが多発したステム
まずは術後にステムの沈み込みが多発したステムを紹介します。
タイプ分類はTapered-Rectangleです。Tapered-Rectangleはステムの角が遠位皮質骨に食い込んで固定されるタイプです。
タイプ詳細は「ステムの基礎知識7」を参照して下さい。
このステムは四隅の角が通常ステムより丸いため、回旋抵抗力と初期固定力が足りなかったのでは、と推測されています。
またポーラス部分の表面粗度が低く、ブラスト処理が1μmであったために十分なBone-ongrowthが起こらず長期固定が獲得されなかったのでは、と推測されています。
最適なブラスト処理は5μm〜6μmと言われている。
実はこのステムに形状が類似しているステムが存在しますが、ブラスト処理が5μm・四隅が角ばっているためか、沈み込みは発生しておりません(2017年現在。内反設置による沈み込みは除く)。
やはりほんの少しの違いが術後成績に影響することを感じたステムです。
ステムは固定力が大切
上記の成績不良のステムからお分かりのように、THA・BHAにおける股関節ステムは固定力が非常に大切です。初期固定・長期固定の両方が十分に獲得されなくては、ステムの沈み込みや、術後の大腿部痛が起こります。
またステムと骨の間にわずかな動き(マイクロモーション)があればあるほど骨新生は起こりにくくなります。つまり長期固定が起こりにくくなる訳です。
骨生成は、骨-インプラント間のマイクロモーションが量が40μmから抑制される。150μmからは骨新生によるBone-ongrowthは完全に阻害される。
最近のTHAでは術後翌日から全荷重とする施設が増えています。
そのため初期固定が十分でないとステムのルースニングが起こり、様々なトラブルが発生してしまいます。セメントレスステムにおいて、初期固定・長期固定は非常に大切です。
今回の記事は決して特定のステム批判ではありません。初期固定と長期固定の重要性をご理解頂くための説明です。
これでステム編は一旦終了です。次回からはTHAカップの基礎知識を紹介していきます。
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