ACL・PCLはどうするの?
- 2018.04.17
- TKA
ACLとPCLはどうするの?
前回は人工膝関節のTKAとUKAについて説明しました。
その中でUKAはACL・PCLの両方を温存させると説明しましたね。それではTKAではどうなのでしょうか?
今回はACL・PCLの処理の違いをタイプ別で紹介します。
ACL・PCLは温存?切除?
レントゲンに軟部組織は写りません。
TKA後のレントゲンには骨と金属製のインプラントしか写らないため軟部組織の処理をレントゲンのみで判別するのは難しいです。
当然ですがレントゲンでは骨とインプラントのみが写ります。
※軟部組織も写らない訳ではないが、把握は困難。
さて、ACLとPCLはとっても有名な前十字靭帯と後十字靭帯ですね。この記事を読んでくれている皆様にはこの2つの靭帯の説明はもはや不要だと思います。
英語表記は、
前十字靭帯:Anterior Cruciate Ligament(ACL)
後十字靭帯:Posterior Cruciate Ligament(PCL)
です。
TKAにおけるこの2つの十字靭帯の処理は3つのパターンがあります。
・ACL・PCL共に切除
・ACL切除、PCL温存
・ACL・PCL共に残存
この3つのパターンです。ACLを温存させてPCLを切除するパターンはありません。多いのはACL・PCL共に切除するパターンで6割程度、ACL切除・PCL残存が4割り程度です。
割合としては少数ですが、ACL・PCL共に温存させる場合もあります。
それぞれのタイプの通称は?
さて2つの十字靭帯の処理の違いでTKAのタイプの通称も異なります。
ACL・PCLともに切除するタイプ:PS型
ACL切除・PCL温存するタイプ :CR型
ACL・PCL共に温存するタイプ :BCP型
それぞれ、
PS型:Posterior Stabilized
CR型:Cruciate Retaining
BCP型:Bi-Cruciate Preserving
※BCP型はBCr型とも言う
それぞれの特徴を簡単に説明します。
PS型
ACLもPCLも切除するためオペ自体の難易度は低めです。PCLの役割をインプラントの形状で担うため脛骨後方制動はインプラントに依存しています。また屈曲時のRollbackは再現されますが、本来の膝関節の動きを完全に再現可能という訳ではありません。
CR型
ACLは切除しますが、PCLを温存させるため、PS型に比べほんの少しですが手術難易度が上がります。PCL付着部の関節面を温存させるため脛骨の骨切りが少しだけ複雑になります。
当然PCLのレセプター等は残存します。また脛骨の後方への制動も靭帯が行いますので、膝屈曲時のRollback機構は本来の膝関節に近い動きで残存します。
BCP型(BCr型)
ACL・PCL共に温存するため膝関節本来の動きにより近づきます。ただし手術難易度はPSやCRに比べ高いものとなっています。ただし拘束性が強く、術後のROMは十分でない症例が多いです。
BCP型インプラントを使用するには、メーカーの提供するキャダバー研修を行う必要があります。
この文章のみ読むとPSよりCR、CRよりBCPが良いのではないかと感じる方も多いと思います。
ただしそう単純ではないのです。
次回以降にCR型・PS型・BCP型のそれぞれの特徴を詳しく説明していきます。
その前にTKAのインプラントの名称を説明しなくては理解が深まりませんので、次回はまずTKAの各インプラントの名称を説明します。
ちなみに、2005年にはBCS型:Bi-Cruciate Stabilizedというタイプのインプラントも誕生しています。これも3種類のタイプを紹介した後に説明していきたいと思っています。
今回は文字ばかり多くなってしまいましたがご容赦下さい。
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