TKA-PS型とは

  • 2018.05.14
  • TKA
TKA-PS型とは

PSタイプとは

前回はTKAにおけるCRタイプを説明しました。
今回はPSタイプを紹介します。CR同様、PS型とも言います。

TKA-PS型とは?

PSとはPosterior-Stabilized の略です。
意味はPosteriorは後方、Stabilizedは安定・固定ですので、後方を安定化したタイプという意味です。
PS型はACLもPCLも切除します。

つまりPS型は、

ACLを切除
PCLを切除 ですね。

CR型がPCLを温存するのに対し、PS型はPCLも切除するという形です。
CR型のメリットと矛盾しているようですがPS型のメリットはPCLを切除する事です。

PCLを切除することにより術野が広がり、後方線維の軟部組織処理や骨棘除去がしやすくなります。またインプラントの形状(Post-Cam機構)により脛骨の後方への安定性を得るためPCLでの制動ではなく、インプラントの物理的な制動になります。そのため、術前の靭帯(ACL・PCL)状態の影響を受けないので再現性の高い運動パターンを獲得できる訳です。

PS型のインプラントは?

TKAにおけるPS型のインプラントを下図に示します。

TKA-PSのインプラント

図の下にCR型インプラントも載せましたので形状比較してみてください

最大の特徴は、大腿骨コンポーネントとインサートのPost-Cam構造です。
大腿骨コンポーネントにCamがあり、内外の顆を結ぶような形で着いています。またインサートには大きく角(つの)のような突起があります。これがPostです。

屈曲の際はこの2つがコンタクト、つまり接触して屈曲時のRollbackが誘発されます。また同様に脛骨の後方移動に対して物理的な安定性を成しています。

TKA-PSの屈曲運動

青い◯で示したのが大腿骨側のCamです。
インサートのPostと接触して屈曲時の脛骨-大腿骨の動きを制御しています。
少し分かりにくいですが、PS型インプラントの断面をみると分かりやすいです。

TKA-PSの断面図

インサートのPostに大腿骨コンポーネントのCamが接触して屈曲していくと、大腿骨側が転がるような構造であることが分かると思います。
また脛骨の後方移動を物理的に防いでいるのもご理解頂けると思います。

これがPS、つまりPosterior-Stabilizedの意味ですね。

長期成績が良いのもPS型の特徴です。ただしインプラント同士の接触が多い分、摩耗の問題があるのも事実です。
接触面はチタン合金またはコバルトクロム合金(大腿骨コンポーネント)とポリエチレン(インサート)であるため摩耗粉の問題も少なからず存在します。

PS型は適応が広い?

前回説明したようにCR型はPCLを温存させます。そのためPCLが拘縮している場合はCR型では術後の可動域成績は不良の場合が多いです。

しかしPS型ではACLもPCLも切除するため、それらの靭帯の状態は直接は関係ありません。いくらPCLの拘縮が強くても完全に切除しますので関係ありませんね。
そのためTKAにおけるPS型は適応が広いです。
レントゲン上にて変形が強い場合は、ACLは消失、PCLは拘縮している事が多い傾向にあります。また、術前の可動域が悪い場合も同様です。

そのため伸展制限が15°以上ある場合のTKAにおいてはPS型が推奨されます。ただし執刀医によっては伸展制限が20°程でもCR型で行うつもりで手術を開始する医師もいます。
もちろん必要であれば術中にCR型からPS型に変更されます(PCLの状態やGAPによる)。

GAPの説明は今後の記事にて解説予定

 

PS型とCR型はどちらが良いの?

これまでの記事を読んでくれている方は流れを把握してくれていると思いますが、どちらが良いかは一概には言えません。
術前の膝関節の状態によってはCR型が適している場合もありますし、PS型の方が適しているという場合もあります。

CR型はPCLを温存することが最大のメリットにもデメリットにも成りえます。
PS型はPCLを切除することが最大のメリットにもデメリットにも成りえます。

屁理屈のようですが、PCLの状態によってタイプの判断を誤ると術後の予後は悪いです。

簡単にまとめると、拘縮が強い場合はPS型が、拘縮のあまりない場合(PCL機能が残存していると考えられる場合)はCR型がそれぞれ適していると考えられます。

しかし長期成績で言いますと、PS型の方がCR型と比較して成績が良いのも事実です。これはPCLの状態があまり良くないにも関わらずCR型を選択した場合が少なからず含まれているからとも考えられます。

ただし当然ながらPS型はACLもPCLもどちらも切除するため、各靭帯に存在する受容器もなくなります。PCLを残す事が良いのか、切除した方が良いのかは一概には言えません

CR型とPS型はどちらにもメリットとデメリットがあるのをご理解頂ければと思います。

 

CR型とPS型を理解すればTKAのタイプの基礎はほとんど網羅したと言っても過言ではありません。近年はCRやPSの他にも様々なタイプのインプラントが出てきておりますが、現在においてはまだまだCRまたはPSが圧倒的に多いです。
そのため理学療法士等のセラピストの方々は、まずはタイプ別による十字靭帯の処理の違いを把握して頂ければと思います。

 

次回はCS型・BCP型(BCr型)・BCS型を説明します。
どれもまだ症例数は少なく、CRやPSに比べ臨床データが十分ではありませんが、インプラントの特徴を把握しておく事が大切と思いますのでぜひ確認してみて下さい。

 

 

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