Midvastus Approachとは
- 2019.08.24
- TKA
Midvastus アプローチ
さて、TKAの基本アプローチは内側からのものは以下の3種類ですね。
・Medial Parapatellar Approach
・Midvastus Approach
・Subvastus Approach
前回はTKAの基本アプローチの1つめ、Medial Parapatellar Approachを紹介しました。
今回は2つめのMidvastus Approachを紹介していきます。
Midvastus Approachとは
Midvastus Approachは読み方はミッドバスタス アプローチです。
手術肢位はやはり仰臥位で行います。
切開部位は内側膝蓋支帯・内側広筋の一部です。
あえて内側広筋の「一部」という表現を使用しました。
もちろん前回紹介したMedial Parapatellar Approachも切開部位は内側広筋の一部なのですが、今回はMedial Parapatellar Approachに比べて「一部」という意味でこの言葉を使用しています。
さて、Midvastus Approach も Medial Parapatellar Approachと同様に膝蓋骨に沿って膝蓋支帯を切ります。
しかし前回と異なるのは内側広筋を切開する方向です。
Medial Parapatellar Approachでは大腿直筋と内側広筋の付着部を大きく切開していたのに比べ、Midvastus Approachでは内側広筋の斜走繊維に沿って切開しているのが分かるかと思います。
この、筋線維にそって切離するというのが重要になります。
Midvastus Approachのメリット・デメリットは?
Midvastus Approachのメリットは内側広筋の切開が少なく済むという点です。
Medial Parapatellar Approachでは大腿直筋と内側広筋の付着部を頭尾方向に大きく切開していました。
今回の術式は内側膝蓋支帯の一部は切開していますが、大腿直筋と内側広筋の付着部はそのままとなっています。
そのため膝関節伸展機構をより残存させることが可能です。
膝関節伸展の機能はTKA後の膝関節にとって非常に重要であり、歩行獲得時期をMedial Parapatellar Approachの場合のTKA患者さんと比較すると、Midvastus Approachの患者さんの方が優位に短かったとの報告もあります。
これは膝関節伸展機構の温存度合いの差がそのまま影響しています。TKAにおいて膝伸展機構を術後にいかに早く回復させるかは非常に重要になってきます。
また、Midvastus Approach は Medial Parapatellar Approachと比べ出血量も減少します。
出血量が少ないことがメリットである理由の説明は不要ですね。
もちろんデメリットもあります。
まず、Medial Parapatellar Approachと比較して手術スペースが狭いです。そのため当然インプラントの正確な設置がより難しくなります。手術スペースが小さいため当然、変形が強い膝関節にはこの術式は向きません。
※変形の目安として術前膝関節屈曲<80°である
また、筋肉内血腫ができるリスクも上がります。
低侵襲は諸刃の剣?
侵襲は少ないに越したことはありません。
侵襲の大きさは術後の回復にダイレクトに影響します。
低侵襲であればあるほど術後の回復は早期です。
しかし、それに伴い手術の難易度は上がります。
低侵襲にこだわりすぎて手術時間が延びてしまった場合など、結果として患者さんに不利益にもなり得ます。股関節のアプローチの紹介の際にも同じような説明をしましたね。
次回紹介するSubvastus Approach も低侵襲なTKAのアプローチとして選択している医師も少なくありません。
しかしもちろん手術の難易度としては前回紹介したMedial Parapatellar Approachよりも高くなります。
そのような視点でも読んで頂けると、術式選択に関して理解が深まるかと思います。
⇐前記事(Medial Parapatellar Approachとは)
記事一覧はこちら