TKA-CR型とは
- 2018.05.06
- TKA
CRタイプとは
前回はTKAにおけるインプラントの名称を紹介しました。大腿骨コンポーネント・インサート・脛骨ベースプレートでしたね。今回はTKAにおけるCRタイプの基礎知識を紹介します。CR型とも言います。
TKAのCR型とは?
CRとはCruciate – Retainingの略です。
意味はCruciateは十字、Retainingは保存、ですので十字を保存するという意味です。
と言ってもCR型はACLは切除します。温存するのはPCLです。
つまりCR型は、
・ACLは切除
・PCLは温存 ですね。
CR型におけるメリットはPCLが温存されている事に尽きます。
脛骨の後方制動を固有靭帯のPCLで行えます。そのため屈曲時のRollbackも自然な動きのままで可能という訳です。
図の左がPCLによるRollback。大腿骨の転がり運動が起こっているのが分かる。右がPCL不全による屈曲時の動き。大腿骨の転がりが起きずに滑りが起こっている。
またPCLを温存する事はPCLに存在する様々なレセプターが温存されるのもメリットです。
軟部組織処理とGAPの概念は今後記載していきますが、PCLの拘縮がある場合は屈曲GAPを確保しにくいため、CRの予定で膝を開いたけれどもPS(PCLも切除)に変更されるという場合もあります。
CR型のインプラントは?
TKAにおけるCR型のインプラントを下図に示します。
図の下にPS型インプラントも載せましたので形状比較してみてください
大腿骨コンポーネントは、大腿骨前面・大腿骨内側顆・外側顆を覆うような作りです。また、PCLの付着部は覆うことのないような作りとなっています。
インサートは大腿骨コンポーネント形状に合わせて丸く凹であり、左右対称の形状のタイプから、内側をより凹にしたタイプのもの等、メーカーによって若干異なります。
CR型はPCLを温存するためRollbackがPCLによって行われる事は前述しました。
そのためPCLが正常であればRollbackに関しては、よりアナトミカルな動きを維持できます。
図には写っていないがPCLにより大腿骨がコントロールされ、Rollbackが誘発される。
ただし、当然ですがPCLが正常でなければいけません。実際CR型TKAの術後ではRollbackがうまく誘発されず、可動域が十分に確保できない場合も少なくありません。
PCLを温存することはCR型のメリットなのですが、PCLに機能異常や組織異常があると大きなデメリットにも成り得るという訳です。
また、CR型はACLを切除します(PS型も同様にACL切除)。
そのためACL不全膝であることには変わりないため、脛骨の前方向への不安定性は残ります。整形外科医によってはPCLを温存させても膝関節の正常な動きは期待できないと言っている医師もいます。
そのためCR型のTKAは、PCLの拘縮がなく、機能が維持されていると判断された場合に最も有効と考えられます。
逆に、PCLの拘縮がある場合はPS型が望ましいと考えられます。
また側副靭帯の拘縮が強い場合もCR型よりもPS型が推奨されます。これはGAPの概念と軟部組織処理の記事の際に説明します。
今回はCR型の基礎知識を説明しました。
次回はPS型の基礎知識を解説していきます。
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