TKAの骨切りについて

  • 2019.10.06
  • TKA
TKAの骨切りについて

TKAの骨切りについて

前回はTKAの手術の概要を説明しました。
今回は、その中で出てきたTKAにおける骨切りについて説明します。

骨切りはインプラントのサイズを決める?

そもそも骨切りはどうして必要なのでしょうか?
答えは簡単明確で、インプラントを設置するためです。
もちろん、変形した骨を切除する目的もありますが、インプラントの形に骨を削らなくては肝心のインプラントが設置できません。

ではインプラントの、骨に接する側の形状はどのようになっているのでしょうか?
脛骨ベースプレートは平面的ですが、大腿骨コンポーネントはやや複雑な形です。
メーカーの機種によって若干異なりますが、概ね画像のような形状になっています。

インプラントの形状に合わせた骨切り

つまりインプラントの形状に合わせて骨の形を整える訳ですね。
また、骨切りを全て完了した状態では設置するインプラントのサイズは変えられません。
小さく切りすぎてしまえば大きいインプラントは設置できません。
また、その逆は物理的に不可能ですね。

インプラントの形状に合わせた骨切り2

上図のように、小さく切った状態で大きなインプラントを設置するとインプラントと骨の間に隙間ができてしまいます。
この状態だとインプラントと骨はくっつくことはありません。
※インプラントと骨が接触していなければ骨新生は起こらない

TKAのインプラントも、THAのステムと同様にセメントレスインプラントはbone ingrowthまたはbone ongrowthで固定されますので、インプラントと骨は接していなければいけません。
bone ingrowth・bone ongrowthの説明はステムの基礎知識1で説明していますので、不明な方は併せてご確認ください。

また、セメント使用のインプラントでは骨とインプラントの間に骨セメントを付着させます。

TKAの骨切りはやや複雑

では実際に大腿骨と脛骨はどのようにカットされるのでしょうか?
骨切りする面を図で説明していきます。

大腿骨の骨切り面は5面(1面+4面)であり、
脛骨・膝蓋骨の骨切り面は1面のみです。

まずは脛骨から説明します。
脛骨は近位端を水平に骨切りします。
基本は骨軸に対して0°の傾斜(垂直)に切ります。

脛骨の骨切り

脛骨関節面に後傾をつけるために5°程度後傾させて切ることもありますが、今はインプラント自体に生理的な後傾角度が付いている機種が増えてきていますので、骨切時点で後傾を付けて切る事はなくなりつつあります。

ただし今でも脛骨に数度の後傾角度を付けて骨切りを行う場合もありますので一概には言えません。
各メーカーの機種構造と執刀医の判断になります。

では大腿骨はどうでしょうか?
大腿骨はまずは遠位端を骨軸に対して垂直に切ります。

大腿骨の骨切り

これは基本どの機種でも同様に垂直です。
斜めに切ってしまうとインプラントの設置不良に繋がります。

次に4面カットと言われる切り方をします。
それがこちら。

大腿骨の骨切り(4面カット)

大腿骨遠位端の1面に加えて上図のような4面がカットされます。
この4面は同時にカットしますので、「5面(1面+4面)」という形で書かせて頂きました。

ここまで骨切りを行うと、もう大腿骨コンポーネントの設置位置は自動的に決定されます。
削った骨の形に合わせてインプラントを設置するのでずらせません。
つまり、設置したいインプラントのサイズに合わせて骨を切っていくという事です。

また、膝蓋骨に関しては、膝蓋骨用のインプラントを設置する場合のみ骨切りを行います。
膝蓋骨はあまり変形しないので、インプラント置換しない医師もいますが、もちろん膝蓋大腿関節(PF関節)も膝関節を構成する大事な要素です。
骨切りを行う場合は、専用のリーマーで削るように骨切りを行います。

膝蓋骨の骨切り

膝蓋骨にインプラントを設置しない場合は、膝蓋骨の骨切りは行いませんが、変形部分を削る作業は行うこともあります。
その際は膝蓋靭帯や大腿四頭筋腱を傷つけないように注意が必要です。

実際の骨切り

脛骨・大腿骨・膝蓋骨の骨切りが済んだ画像がこちらです。
それぞれの骨がカットされているのが分かります。

骨切りされた膝関節

大腿骨の遠位端面は左右に穴が空いている面です。
この穴に大腿骨コンポーネントのペグが挿入されます。
(真ん中の大きな穴は術中器械を固定する穴であり、インプラントのペグが挿入される穴ではありません)
同様に、膝蓋骨の3つの穴もインプラントのペグ部分が挿入されます。
上写真では分かりにくいですが、脛骨にも割と大きな穴が空いています。ここには脛骨ベースプレートのペグが挿入されます。

すべての骨切りが済んだら、切った骨の形に併せてインプラントが設置される訳です。

骨切り後のインプラントの設置

今回はTKAにおける骨切りを説明しました。
骨切りは人工関節の基本ですが、実際どのように行われているか把握していない理学療法士等のリハビリセラピストも少なくないのではないでしょうか?

今後紹介していく関節GAPを理解していく上で重要になってきます。

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