PAとERPの術野の違い

PAとERPの術野の違い

PAとERPの術野の違い

前回は術野について解説しました。

今回は少し具体的に、PA(後方アプローチ)ERP(短外旋筋温存アプローチ)での術野の違いを例にして解説していきます。

PAとERPをまだ確認していない方はリンクから確認してみてください。

 

ERPの術野はどれくらい?

THA・BHAにおける術野はどれくらい?」で説明した通り、PAは後方系アプローチになるので大腿骨側の術野は前方系に比べて確保されやすいです。それでも狭い術野であることはご理解頂けたと思います。

さて、ERPは短外旋筋である近位3つの筋「梨状筋」「上双子筋」「内閉鎖筋」を切らずに温存します。後方系のアプローチにおいて外旋筋を切開することは大腿骨頸部を露出させる上で必要な処理になってきますが、近位3筋を残すことで術野がさらに狭くなります。

BHAにおけるERPの術野

近位3つの外旋筋を残存させている。図の下方に写っている糸で遠位3筋の外旋筋をめくっている状態。

では通常の後方系のアプローチである、PAやPLAと比べると術野はどの程度異なるのでしょうか?

それがこちらです。

PAとERPの術野の違い

左はERPでの術野。右がPA・PLAでの術野。

少し分かりにくいので術野部分に着色したものがこちらです。

PAとERPの術野の違い(着色)

右のPA・PLAでの術野では外旋筋が付着している関節包が骨頭付近に少し重なっているが術野として着色した。

通常のPAやPLAに比べ半分程度しか術野が確保されていないのが分かります。これだけ狭くなるとステムの正確な挿入が難しくなり、設置不良などを起こしやすくなる場合もあります。そのため以前も記載しましたが、ERP術中に残存させておいた短外旋筋を切離して通常のPAに変更することもあります。

また、上の写真は2枚ともまだ骨頭が抜去されていない(大腿骨頸部の骨切りが済んでいない)状態です。

このあと小さな電動ノコギリのような器械で大腿骨頸部を切って骨頭を抜去するのですが、骨頭を抜去した後に脱臼肢位をとり、大腿骨側にステムを挿入するための処理を行っていきます。

脱臼肢位をとるため骨頭抜去後の大腿骨処理の術野はもう少し広がります。どちらにしろ執刀医は狭い術野で手術を行っているのですね。

整形外科における関節の手術は他の手術に比べ格段に術野は広いです。例えば内視鏡等はもはや術野は関係なく、モニターのみを見て手術しますからね。

 

今回は術野の紹介をPAとERPで比較して解説してみました。

手術中の目で確認できるスペースは侵襲が少ないほど狭いという事をご理解頂ければ幸いです。

 

ちなみに脱臼肢位に関してセラピストと医師で若干の認識の違いがあるように感じます。そのため次回はコラムとして脱臼肢位の認識の違いを説明します。

 

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