BHA・THAの股関節の動き方
- 2018.01.27
- THA・BHA
BHA・THAにおける股関節の動き方
前回、前々回とBHA(人工骨頭置換術)THA(全人工関節置換術)において使用するインプラントについて書きました。
今回はBHAとTHAのインプラントによる可動性の違いを書いていきます。
また、BHAやTHAで 可動性 や 可動域 と聞くとまず思い浮かべるのは「脱臼」ではないでしょうか?ここでは脱臼に関しての土台となる知識を学んで頂ければ幸いです。
BHAとTHAで可動域は違うの?
まず、前回の記事で書かせて頂いた通り、BHAとTHAではカップが全く違います。
- 主に骨頭の役割を果たすBHAのアウターヘッド(バイポーラーカップ)
- 主に臼蓋の役割を果たすTHAのTHAカップ
でしたね。
結論から言うと、
BHAの方がTHAに比べ可動域は大きいです。
THAはBHAに比べて可動域は小さいです。
では具体的にその理由を見ていきましょう。
BHAの股関節の動き方は?
イラストで説明します。どうしても2Dになってしまうのですが、これを分かっているだけでも全然理解度が違いますので、まずは2Dで理解しましょう。
BHAのステムの最初の位置がここだとします。
BHAは運動中心が2つあります。インナーヘッドの運動中心、アウターヘッドの運動中心です。
まずはインナーヘッドが動きます。
次にアウターヘッドが動きます。それが下のイラストです。
つまり可動が2か所となっているのです。そのため名称が「Bipolar」なのですね。
インナーヘッド側の動きとアウターヘッド側の動きを足したものがBHAの可動域となっております。そのため股関節のROMの制限のEnd Feelは基本的にSoftとなります。可動域がかなりあるので、インプラントの可動域限界までくる前に靭帯なり関節包なりで制限される訳です。
※End Feelとは可動域の最終域で感じ取れる感触のことです
THAの股関節の動き方は
次にTHAです。BHAとの違いを理解しましょう。
THAのステムの最初の位置がここだとします。
THAはカップ側が骨盤側に固定されているので、運動中心は骨頭の1つのみです。
まず動くのはステム側です。
これだけです。ここしか動きません。
カップ側は臼蓋骨に固定されているためステム側、つまり骨頭のみの可動となります。そのためBHAに比べ可動範囲は少なくなります。
またROMのEnd FeelはHardとなります。THAにおいては可動域の最終域にてカップとステムのインピンジメント(衝突)が発生する訳です。周囲の軟部組織がかなりの硬縮をしていない限りインピンジが起こり物理的に可動しなくなるため、THAのEnd FeelはHardです。
ちなみにインピンジメント(衝突)が起きない動きもあります。それは次回書きます。
BHAは脱臼しない?
THAやBHAにおける脱臼はステムとカップがインピンジ(衝突)しているのにも関わらず、それ以上動こうとすると起こります。
つまり可動域の観点でいえばBHAは脱臼しにくく、THAは脱臼しやすいということです。BHAはほとんどがインプラントのインピンジは起こりません。関節包や靭帯にてROMは制限されます。一方THAは、インプラントのインピンジが起こり限界可動域に達するので、それ以上動かすとヘッドがカップを乗り越えてしまい脱臼が起こります。
イラストで説明したように可動部が2つのBHAと、可動部が1つのTHAでは可動域の範囲が違いますよね。
つまりBHAよりTHAの方がよっぽど脱臼しやすいです。
整形外科医によってはBHAは脱臼しないと断言していらっしゃる医師もいらっしゃいます。私も、BHAは転倒転落しなければ脱臼はしないと思います。
また、POTの方のリハビリ業務においてTHAやBHA術後の可動域訓練があると思います。BHAは相当無理な他動的エクササイズをしない限りまず脱臼はしません。
THAはEnd FeelがHardですので、集中してEnd Feelを感じてください。HardのEndFeelを感じるまでは動かして大丈夫です。インジンジが起きない限り脱臼の危険はありません。
どう触ってもSoftだという患者さんは関節包の拘縮が強い状態なのかもしれません。カップとステムのインピンジ(衝突)が起きない限り脱臼は起こりません。
恐らくリハビリ業務に従事しているPTさんやOTさんは脱臼が気になるのではないでしょうか?脱臼に関してはまた詳しく記載するつもりです。
PTの方向けの術後脱臼に関する詳しい内容は次の記事のインピンジメントの説明で書いていきますので併せて読んで頂ければと思います。
次回はTHAにおけるカップとステムのインピンジメントについて詳しく書いていきます。
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