レントゲン撮影の肢位について
- 2018.03.26
- 人工関節
レントゲン撮影の肢位について
前回はRadiolucent Lineを紹介しました。
レントゲンからはたくさんの情報が手に入ります。ただしオーダー通りの肢位で撮影されたレントゲンでなければ正確に読み取れない事も多いです。
今回は股関節のレントゲンがきちんと中間位かどうか確認する方法を紹介します。
股関節レントゲンにおける中間位の判断方法
股関節のレントゲンはいくつか撮影方法がありますが、恐らく最も多いのは前後像(正面像)だと思います。理学療法士等のセラピストの方々も股関節レントゲンと言えばまず前額面の画像を思い浮かべると思います。
これらは骨盤の前後傾がなく、大腿骨の内外旋がなく撮影するのが基本です。
では早速股関節のレントゲンを確認していきましょう。
今回はこのレントゲン写真を例にみていきます。
このレントゲン写真を見て、骨盤の前後傾・大腿骨の内外旋がどの状態か判断できますでしょうか?
骨盤の前後傾の判断方法からみていきます。
実は骨盤の前後傾は閉鎖孔の形で判断できます。
閉鎖孔は、前傾位で狭く潰れて写ります。後傾位では広く縦長に写ります。
ただし、縦長に細く写る場合は物凄く後傾している場合なのでレントゲンではほとんどあり得ません。
次に大腿骨の内外旋の判断方法を説明していきます。
大腿骨の内外旋は小転子の写り方で判断できます。
小転子は、内旋位で小さく または写り込みません。外旋位では大きく写ります。
もちろん骨の大きさや形状に若干の個人差がありますが、基本的な構造は同じなためこのように判断可能です。
実際にレントゲンを比較してみる
では実際に骨盤が前傾(後傾)したり、大腿骨が内旋(外旋)している状態のレントゲンはどのように写るのでしょうか?
まずは骨盤の前後傾です。
左写真が骨盤後傾位、右写真が骨盤前傾位のものです。
左では閉鎖孔が縦に長く写っているのが分かります。反対に右では閉鎖孔が横に潰れて写っているのが分かります。
また余談ですが右写真では大腿骨の頸体角がかなり大きく、臼蓋の被りも浅いです。被覆率を上げようと前傾位で安定させているのかも知れません。
次に大腿骨の内外旋です。
左写真が大腿骨内旋位、右写真が大腿骨外旋位のものです。
左では小転子が大腿骨に隠れてしまっていて写っていません。
良く見ると大腿骨に重なっている小転子が確認できる
右写真では小転子が大きく写り、大転子も大腿骨頸部(の背側)に重なって写っているのが分かります。
レントゲンは頭の先からつま先まで様々な撮り方が存在します。
医師のオーダーによりレントゲン技師さんが患者さんのポジショニングを調整して撮影してくれますので、本来であればどのレントゲンも同一処方においては同じように写らなくてはいけません。
ただし円背が強い患者さんもいれば股関節の屈曲拘縮を起こしている患者さんもいらっしゃいます。そのため骨盤と大腿骨が中間位で撮影するというのは結構難しいのです。
レントゲン写真を見て、骨盤が前傾(後傾)位で写っているのか、または大腿骨が内旋(外旋)位で写っているのか等の把握ができるようになって頂ければと思います。
股関節レントゲンの前後像(正面像)における骨盤・大腿骨の中間位の判断が可能になってところで、次回はステムとカップのテンプレートについて説明していきたいと思います。
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