外側アプローチ(DLA)
- 2018.02.07
- THA・BHA
外側アプローチ
前回は後側方アプローチ(PLA)を紹介しました。今回は「外側アプローチ」を紹介使用と思います。別名「側方アプローチ」とも言います。
まずは概念から説明して行きます。
外側アプローチとは
外側アプローチは英語でDirect Lateral Approachです。略字ではDLAと記載されます。
THA・BHAにおいてDLAが選択される事はあまり多くありません。ただしRevisionでの再置換術などの場合は選択される事が多いです。RevisionとPrimaryについては「脱臼率は何%?」で少し触れているので分からない方は確認してみて下さい。
DLAの皮切は筋自体を切る『筋切開』切開部位は
中殿筋 です。
中殿筋を縦に大きく切開し、そこから骨頭を露出させます。中殿筋を大きく切開するため十分な術野が確保されます。そのためオペもやりやすいです。しかし皮切が大きい分患者さんへの術後の負担は大きくなります。
脱臼肢位は 屈曲+内転+外旋 です。
内旋ではなく外旋です。この脱臼肢位はDLA以外では基本的にとられません。外側の真ん中から中殿筋を切開するため、そこから骨頭を前方に向けるため外旋になります。外旋筋を切開しないためですね。ただし中殿筋を切開し、そこから骨頭を後方に向ける場合は内旋になります。ほとんどは外旋させて骨頭を前方へ向けることが多いです。
再置換などの大手術の際には大きな術野と手術スペースが必要となりますのでDLAを選択するDr.も少なくありません。
DLAでは中殿筋を切開するので、術後に中殿筋の出力が低下します。
セラピストの方はご存知の通り、股関節外転筋は股関節の安定性に非常に大きく関与していますので、術後の中殿筋の出力は大切です。中殿筋の切開が大きいため術後の外転筋力の多くは低下します。そのため半年は股関節がいわゆる「不安定」な状態となってしまいます。
DLAの特異性は?
DLAは大転子を温存する術式と大転子を剥離する術式があります。大転子を剥離、と言っても全部を切除するのではなく一部です。患者さんの骨や筋の状態にもよりますが、切除する大きさは異なります。
再置換を行う場面において、細菌による感染の場合があります。ブドウ球菌等の一般的なバイ菌ですね。これらが関節の中で増殖すると骨や筋を蝕みます。すると筋は溶けるようになくなっていってしまいます。
そのような感染症が原因での再置換の場合は、大転子を剥離してしまう事が多いです。
つまり感染によって中殿筋や外旋筋がほとんど残っていない、または機能していない場合ですね。またそのような場合は深層外旋筋も大腿筋膜張筋も消失してしまっていますので、術中の脱臼肢位は外旋内旋はもはや関係なくなります。
左:ブドウ球菌 右:感染した股関節。大転子が写っているが外旋筋がほぼ消失している。
このように感染症による再置換にはDLAは多く選択される傾向があります。
THAやBHAの再置換は大手術です。それに手術自体も非常に難しいのです。大手術であるため、狭い術野、狭い手術スペースではオペ時間が非常に伸びてしまいます。ただしオペ時間が伸びれば、出血量も多くなりますし、麻酔時間も長くなります。患者さんの体力がもちません。これらは患者様の身体面に大きく影響してきます。
そのため再置換においては切開部位が多少大きくなってしまっても、手術を短時間で円滑に進めるためにDLAが適していると考えられています。
もちろん各Dr.によって意見は異なりますが。
またDLAは前述した通り、再置換で多く選択されますので、リハビリテーションの臨床ではあまり遭遇する機会は少ないかも知れません。ただし切開部位と簡単な特徴くらいは覚えておくと良いと思います。
外側アプローチ(DLA)の紹介は以上です。
次回は前側方アプローチについて説明していきます。
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