カップの基礎知識2 スクリュー設置
- 2018.03.13
- THA・BHA
カップの基礎知識2
スクリュー設置
前回はカップの基礎知識として種類や固定方法を説明しました。今回はセメントレスカップのスクリュー設置について説明したいと思います。
スクリューの役割
セメントレスカップにはスクリューを設置して固定する場合が多いです。
これは骨にカップを密着させる事でBone ongrowthを促す事はもちろんですが、もうひとつの目的があります。
それはカップの回旋防止です。
ステムと異なり、カップには基本的に強い回旋力はかかりにくいです。カップの回旋は矢状面上の回旋と、前額面上の回旋があります。
最近のカップは表面の加工のポーラス構造がしっかり骨に食い込むタイプのものが多いため、スクリューなしでも十分な回旋抵抗力が期待できます。
しかしポーラス加工がメッシュ加工のものは初期固定力が弱いためスクリューの使用が推奨されます。
メッシュ加工は初期固定は弱いですがBone ingrowthが起これば長期固定は問題ありません。
スクリュー設置の向き
THAにおいてカップのスクリューはむやみに設置すれば良いという訳ではありません。向き、長さが重要です。
臼蓋のすぐ内側には下腹部の腹腔があり、重要な臓器が多く存在します。そのため骨を貫いて設置すると腹腔内にスクリューが侵入し臓器を傷つけてしまいます。また股関節周囲には様々な神経や動静脈が走行していますので、それらを損傷すると大変なことになってしまいます。
THAカップのスクリューは骨量の豊富な腸骨側に向けてスクリューを設置するのが基本です。
スクリュー設置における安全域は目安が決まっております。設置位置の目安は4区画に分かれており、それぞれの危険因子が異なります。区画の分け方は、上前腸骨棘(ASIS)から臼蓋中心を結ぶ線を引き、そこに直角に交わる線を引きます。この交差する2本の線で4区画に分けられます。
それぞれの範囲で危険度と危険因子が異なります。A〜Dで表しました。
A:Safe Zone
この範囲は安全域です。坐骨神経と上殿神経を損傷する可能性はありますが、腸骨内にしっかり収まればスクリューが坐骨神経や上殿神経を傷つける心配はありません。長過ぎるスクリューを設置しない限り安全と言えます。
スクリューは長くても50mm程度までしか製造されていない
B:Caution Zone
スクリュー長が20mm未満ならば安全域です。スクリュー長が長すぎると坐骨神経や下殿神経、陰部神経を損傷する可能性があります。この領域にスクリューを設置する際は短いスクリューが推奨されます。
C:Danger Zone
基本的にこの領域にはスクリューは設置しません。閉鎖神経・閉鎖動静脈を損傷する可能性があります。
D:Danger Zone
基本的にこの領域にもスクリューは設置しません。外腸骨動静脈を損傷する可能性があります。
基本的にTHAにおいてスクリューは図で示したAの範囲(Safe Zone)に設置します。Danger Zone には、Safe Zone・Caution Zoneを避けたいよっぽどの理由がない限り設置しません。
上図のように、スクリューは2本以上設置するのが良いとされています。
2本以上で回旋が予防できます。せっかくスクリューを設置しても1本のみでカップが回旋してしまっては意味がありません。
今回はTHAに関して必ず知らなくてはいけないスクリューの設置について説明しました。
次回はCUPの設置について説明します。
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