前側方アプローチ(AL)
- 2018.02.08
- THA・BHA
前側方アプローチ
前回は外側アプローチ(DLA)を紹介しました。
今回は「前側方アプローチ」を紹介しようと思います。別名「前外側アプローチ」とも言います。
まずは概念から説明です。
前側方アプローチとは
前側方(前外側)アプローチは英語でAnterior Lateral Supine Approachです。略字ではALSと記載されます。
「Supine」とは仰臥位(背臥位)という意味もあるため、手術は仰向けで寝た状態で行われます。
また、側臥位で行う前側方アプローチはAnterio Lateral Approachです。これは「ALA」ですね。ALSとALAの違いは側臥位か仰臥位かの違いという認識で良いです。
前側方アプローチの場合はALSとALAを総称して「AL」という場合が多いです。
この記事でもALSとALを総称して「AL」と表現します。
現在ALAはほとんどが後述のOCMの場合が多い。
さて、今まで紹介してきた術式は全て「筋切開」でした。つまり筋そのものを切って関節包まで到達するものです。そのため術後の筋力低下は避けられません。
今回紹介するAL(ALA・ALS)は「筋間切開」です。
筋と筋の間を切開していくため、筋自体は切開しません。つまり術後の回復も筋切開に比べ早く、筋の出力低下も起こりにくいです。筋を直接切開しないメリットはもう皆さん十分にご理解していると思いますので割愛させて頂きます。
切開部位は、中殿筋と大腿筋膜張筋の間です。
中殿筋そのものや大腿筋膜張筋そのものは理論上は切開しません。筋と筋の間を切開します。ただし当然、連結部位の筋膜や結合組織は切開します。
脱臼肢位は 伸展+内転+外旋 です。
前方系のアプローチは全てこの脱臼肢位ですね。
ALSが仰臥位 ALAは側臥位
基本情報はこれくらいです。
それではALの特異的な部分を確認していきましょう。
前方系は大腿骨側の処理が難しい?
AL(ALS・ALA)は前方系のアプローチです。前方系は術中の大腿骨側の処理の難易度が高くなります。なぜ難しいのかというと、術中の脱臼肢位が股関節の伸展のため大腿骨の手術スペースも術野も狭くなってしまうからです。そのためステムの設置不良が後方に比べて起こりやすいです。
ただし臼蓋は前方を向いているので前方系は臼蓋側の処理つまりカップ設置はやりやすいアプローチであります。
詳しくは改めて記事にします
ALは慣れないDr.が執刀すると手術時間が伸びたり、ステムの設置不良が起こることがありますので、研修医などが行うBHAにおいてはあまり選択されることはありません。BHAは後方系が多いのは説明しましたね。ALは先輩医師の手術の助手として入りながら学んでいく術式という立ち位置です。
THAにおいてはALを選択する整形外科医は近年においては増加傾向にあります。理由としては、低侵襲かつ前方アプローチより簡易的であることに加え、カップの設置がし易いためです。
簡易的といってもPA(後方アプローチ)やDLA(後側方アプローチ)よりは難易度は高いと言われています。
また側臥位で行うAL、つまりALAと似ているアプローチがOCMと呼ばれる術式です。
Orthopädische Chirugie München の略で、ドイツのミュンヘンで考案されたものです。ALと切開部位は同様ですが、皮切を短くしてさらなる低侵襲を実現させています。また側臥位の分、術中の股関節の動きが大きく出せます。そのため小さな皮切でも術中に多面的にメスを入れられるメリットがありますね。
現在ALと言われている手術は実はほとんどがOCMです。
前側方アプローチ(ALS・AL)の紹介は以上です。文章ばかり長い記事になってしまいました。読んで頂いた方、ありがとうございます。
次回は前方アプローチについて説明していきます。
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