短外旋筋温存アプローチ(ERP)

短外旋筋温存アプローチ(ERP)

ERPアプローチ

今回は後方アプローチ(PA)の変法のERPというアプローチを紹介使用と思います。

PAの記事で説明しましたが、後方系のアプローチは股関節の外旋筋群を切開してしまいます。そのため後方脱臼のリスクも上がり、術後の股関節機能も低下します。それを改善させたのが今回紹介するERPというアプローチです。ERPを説明するまえにまずは外旋筋を復習しましょう。

 

6つの短外旋筋群ってどんな配置なの?

股関節の外旋筋の総称はいくつかあります。

深層外旋筋群」「外旋六筋」「短外旋筋群」などです。どれも同じ6つの筋を示します。

まずは6つの外旋筋を把握しましょう。

6つの外旋筋

近位から順に梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋・外閉鎖筋・大腿方形筋

 

これらの外旋筋は骨頭のちょうど後方に位置し、その筋自体が骨頭の後方脱臼を防ぐ壁となり、後方脱臼の最後の砦としての役割を担っています。骨を筋の合わせるとその配置位置による後方脱臼の壁となるのが分かりやすいです。

外旋筋の役割(骨頭の壁)

左の◯が骨頭の位置。右が骨と筋を重ねた画像。ちょうど骨頭の後方に短外旋筋群が位置しているのが分かる。

 

このように短外旋筋群は骨頭の後方脱臼を防ぐ役割もあるんですね。

通常PLPLAでは6つ全ての外旋筋を切開します。その後に縫合する場合と縫合しない場合があることは後方アプローチ(PA)の記事で説明しましたね。

 

通常の後方系のアプローチは?

後方系のアプローチは以前紹介した通りPAPLAです。まだ把握していない方はリンクを参照して下さい。

これらの後方系アプローチにおいては6つの短外旋筋は全て切開します。

通常の後方系アプローチ

術後に切開した短外旋筋群を縫合する場合としない場合では脱臼率に差がでます。縫合したほうが脱臼率は下がるため、縫合される場合が多いです。

脱臼率の詳しい説明は「脱臼率は何%?を参照して下さい。

 

ERPってどんなアプローチ?

それでは本題のERPの説明をしていきます。

ERPExternal Rotation Preserving の略です。日本語では短外旋筋温存アプローチと言われています。名前の通り、後方系のアプローチであるにも関わらず短外旋筋を温存できるというアプローチです。

ERPは通常の後方系のアプローチとは異なり、短外旋筋群の近位3筋を切開せずに残します。残す筋は具体的に・梨状筋 ・上双子筋 ・内閉鎖筋 の3筋です。

ERPアプローチ

ERPの多くはPA・PLAに比べ大腿方形筋を大きく切開する

PAPLAは短外旋筋群を切開しますよね。近位3筋(梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋)を術中に切らずに残すため当然術野が狭くなり、PAPLAよりも手術の難易度が向上します。

そのためERPに慣れていない執刀医では途中で残しておいた外旋筋を切開して術野を広げ、手術時間短縮を優先する場合もあります。つまりERPで手術を開始しても途中で通常のPAPLAに変更可能ということです。そのためリスクが少なく手術のハードルも低いと言えますね。

 

外旋筋を残すメリット

少し前述しましたが、外旋筋は後方脱臼に対し有利です。つまり外旋筋を残したほうが後方脱臼が起こりにくいということです。特に後方脱臼に対して有効な筋は「梨状筋」と「内閉鎖筋」と言われています。ERPではこの2つの外旋筋を残せるため、通常のPAPLAに比べ脱臼率が下がります。

ちなみに外旋筋を縫合しないPAPLAERPでは脱臼率が8倍も違うと言われています。

脱臼に有利というだけではありません。

術後の股関節機能が低下しにくいメリットもありますね。理学療法士等のセラピストの方々は股関節に対する外旋筋の重要性は良くご存知だと思います。

このように同じ後方系のアプローチでも外旋筋の処理は様々なんですね。

これで皆さんは後方系アプローチはPA・PLA・ERPの3種類を把握したことになります。

 

以前記事にもしましたが、THABHAに対するアプローチは非常に多いです。このような外旋筋を温存するアプローチもあるということを把握しておきましょう。

 

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