レントゲンから見る脱臼リスク2

レントゲンから見る脱臼リスク2

脱臼しやすいインナーヘッドとは?

前回はレントゲンから読み取れる脱臼のし易さの目安として「CUP外転角」の説明をしました。

今回は同じく脱臼のし易さの目安として「インナーヘッドの大きさ」について説明します。

  1. カップの設置位置(THA)
  2. インナーヘッドの大きさ(THA)
  3. 関節包のテンション
  4. 術式

の2番目ですね。

インナーヘッドって何?という方は「THA・BHAにおけるインプラントの種類」を確認してみて下さい。

 

インナーヘッドは大きい方が脱臼しにくい?

さて小さなヘッドと大きなヘッド、どちらが脱臼しにくいのでしょうか?

結論から言うと、インナーヘッドは大きいほど脱臼しにくいです。では大きいヘッドと小さいヘッドで何に差が生じるのでしょうか?

1つは「可動域」の差、もうひとつは「Jumping Distance」の差です。

インナーヘッドの大きさに差があればあるほどこの2つの差が広がります。この2つについて説明していきます。

 

可動域が大きい方が脱臼しにくい

これは分かりやすいと思います。「脱臼の原因」の記事で、THAにおいてはインプラントがインピンジ(衝突)する可動域が限界可動域と説明しましたね。脱臼はインピンジが起きてから発生するとも説明しました。

ではこの限界可動域が大きければ大きいほどインピンジするまでの余裕が大きくなるので脱臼しにくいということです。

文章では分かりにくいので図で説明します。

Headの大きさによる可動域の違い2

このようにインナーヘッドが大きいほどインピンジするまでの可動域が大きくなり、より大きく股関節を動かせるということですね。

各Headの大きさによる可動域の違いは以下の通りです。

Headの大きさによる可動域の違い

Altimet Company

 

Jumping Distanceとは

もうひとつの要因、Jumping Distanceについて説明します。

Jumping Distanceとはカップからヘッドが脱臼するまでに必要な距離のことです。つまりヘッドがカップを乗り越えてしまうまでの長さということです。日本語で言うとジャンプする距離ですかね?対応する日本語がないので直訳でしか表現できません。要するにヘッドがカップをジャンプして乗り越えてしまう、そういった概念からの言葉になります。

図で説明するとこうなります。

JumpingDistance

この距離が大きい程ヘッドはカップを乗り越えにくくなります。逆にJumping Distanceが小さいとより簡単にカップを乗り越えてしまう訳です。

Jumping Distanceは脱臼に対する最後の砦です。Jumping Distanceを大きくしたいために執刀医によってはヘッドサイズを機種決定の優先項目に入れる医師もいます。とにかく小さいよりも大きいヘッドが良い訳です。

 

それでは実際のレントゲン写真でヘッド径を比べてみましょう。

比べるとこんな感じで違いに気が付きます。

Headの大きさ比較

同じTHAでも実際は異なるサイズのヘッドを使用しています。

レントゲンの写りによってはヘッドが見えにくい場合もありますが、小さいかどうかは判断できると思います。最近はほとんど小さいサイズのヘッドは使用されなくなりました。

 

インナーヘッドのサイズバリエーションは?

インナーヘッドのサイズバリエーションってどれくらいあるのでしょうか?

前述しましたがヘッドのサイズで可動域もJumping Distanceも異なります。それなら最初から全て大きな物を入れれば良いんじゃないの?と思う人もいるかもしれません。

しかし、大柄な男性は元々大きな股関節ですし、小柄な女性は小さな股関節です。そのためカップもヘッドもサイズバリエーションが必要になるのです。小さな臼蓋の患者さんに大きなカップは入れられません。

Headのサイズバリエーション

各メーカーによってヘッドサイズのバリエーションは異なりますが、小さいサイズで22mmからあります。だいたい多く使用されるのは28mm・32mm・36mm辺りです。昔は小さな径のヘッドが多く使用されていましたが、最近では28mm以上を使用されることがほとんどです。

実はその理由はTHAに使用されるポリエチレンにも関係があるんです。それはまた別で書きます。

 

 

さて、レントゲンで確認できる脱臼のリスク、今回は「インナーヘッドの大きさ」について説明しました。

受け持ちのTHA患者さんのレントゲンを見てインナーヘッドの径を確認してみましょう。

これもCUP外転角同様、脱臼のリスクが視覚的に把握できます。

 

次回はヘッドが小さいサイズから大きなサイズが使用されるようになった理由を説明してから、レントゲンから読み取る関節包のテンションについて説明していきます。

関節包の張り具合もレントゲンから脱臼のリスクを確認出来るんですよ。

 

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