DDHとは

DDHとは

DDHとは

前回はBHAにおけるBipolar CUPのテンプレートの仕方を説明しました。

今回はTHAのCUPテンプレートに行く前に、DDHについて説明します。THAの適応は主に変形のある股関節ですので、THA-CUPテンプレートをより理解するためにまずはDDHを理解しましょう。

DDHってなに?

それではさっそくDDHとは何なのでしょうか?

DDHとは、Developmental Dysplasia of the Hipの略です。

日本語では発育性股関節形成不全と言われています。これは出生時に既に股関節脱臼がある場合も、後天的に脱臼し得る状態も広く含めた総称です。
つまり臼蓋形成不全も、先天的股関節脱臼も、股関節亜脱臼状態も全てDDHになる訳ですね。

ちなみに以前はCDH(Congenital Dislocation of the Hip)と呼ばれていました。

今回はTHAの適応の変形性股関節症に繋がりやすい「臼蓋形成不全」と、本来の股関節の位置から大きく上方へ偏位している「股関節脱臼」について説明します。

発育成股関節形成不全 DDHとは

このように臼蓋形成不全から股関節脱臼まで様々な形成不全状態の総称をDDHという。

Sharp角とCE角とは?

まずは臼蓋形成不全からです。この言葉は医療従事者以外にも有名になってきていますね。どのような状態なのかは皆様十分にご存知であると思いますので病態の説明は省きます。このセッションでは臼蓋形成不全の判断の目安を説明します。

臼蓋形成不全はSharp角CE角を見て判断されます。

日本語での読み方はシャープ角シーイー角です。

Sharp角 CE角

Sharp角は両側の涙痕を結んだ線と、涙痕から臼蓋外縁を結んだ線の成す角度です。
この角度が40°より大きい場合は臼蓋形成不全となります。

CE角は骨頭中心を通る垂線と、臼蓋外縁を結んだ線の成す角度です。
この角度が20°以下で臼蓋形成不全となります。

変形が強くなると骨頭中心が把握しにくくなるためCE角とSharp角の両方を把握しておくと良いです。
この辺りは理学療法士などのセラピストの方々も良くご存知かと思います。

DDHにおける股関節脱臼

DDHにおける股関節脱臼は交通事故などの外傷によるものとは異なります。小児期において発見が遅れ、適切な治療が成されずに成長していくと骨頭は脱臼した肢位で安定してしまいます。重度のDDHでは周囲の関節包は伸張されており、伸張された関節包は腸腰筋による圧迫を受けている状態となります。

股関節脱臼の程度

しかしこれらは痛みのない場合がほとんどで発見が遅れる事が多いものでした。そして小児期からの続く形成不全状態のまま成長していってしまう場合が多かったようです。

1970年頃から小児期からの予防活動が開始されてからはその発生率は減っています。

 予防活動は小児期におけるオムツの形状や抱っこの仕方など

またDDHの病態が徐々に解明されてきており、先天性股関節脱臼は治せると言われ始めています。

 ではなぜ成人にて臼蓋形成不全が発生するのかは残念ながら不明

しかしながら成人においてもDDHにおける股関節脱臼は存在しており、手術適応となる場合も多いです。
では脱臼の程度はどのように判断されるのでしょうか?

Croweの分類というのもがあります。

Croweの分類とは?

DDHにおける股関節脱臼の目安としてCroweの分類があります。
日本語でクローの分類と読みます。

これは文章で説明すると少し分かりにくいのですが、理解すれば簡単です。

Croweの分類 股関節脱臼の程度分類

股関節がどの程度上方偏位しているかを4段階に分けた分類です。
両側涙痕を結んだ線(本来骨頭があるべき場所)からどの程度、骨頭下縁つまり骨頭頸部移行部がどの領域にあるかで分類します。

健側側の骨頭直径を4当分します。

・骨頭直径の 0 〜 1/2 の範囲にあるものをType 1

・骨頭直径の 1/2 〜 3/4 の範囲にあるものを Type 2

・骨頭直径の 3/4 〜 1 の範囲にあるものをType 3

・骨頭直径分以上上方偏位しているものを Type 4

というふうに分類されます。
脱臼が高位である程、また臼蓋側の骨量が少ない程、THAの手術は難しくなります。
脚長差やカップ固定性に問題が出てきてしまう訳ですね。

 

次回はTHAにおけるCUPのテンプレートについて説明します。
臼蓋形成の話や脱臼における脚長の話などが出てきますので、まずは今回のDDHについて先に説明しました。

 

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